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機セ餠盥嶌

農林漁業金融公庫融資業務部
農業課長  柴田信道

1.金融機関から見た農業者の資金繰り

初めて資金を借りようとして銀行や農協に行くと、「まずは決算書や税金の申告書を出して下さい。」と言われる。「書類より先に人間性を見てくれ」と思いたくなるが、一体、金融機関は、決算書で何を分析しているのか。

農業に限らず、これまでの産業界では、売上げや利益の大きさがポイントになっていた。しかし、最近の金融機関で流行っているのは「キャッシュフロー」という言葉。横文字を浮かべると難しそうだが、日本語に意訳すれば「資金繰り」のこと。なぜ「資金繰り」が重要視されているのだろうか。

ここに、年間売上が3千万円あり、手元に1千万円の利益が残る農業者がいたとしよう。それだけ見れば、金融機関にとって悪くないお客様。しかし、この農業者に5千万円の借入金があり、年間1千万円の返済があるとしたらどうか。家計費まで考えれば、実際には大赤字。残念ながらお付き合いが難しいお客様になってしまう。

結局、金融機関側から見れば、重視するのは「表面的にいくら儲かっているのか」ではなく、「実際の資金繰りはどうなのか」ということになってくる。

これを逆から考えれば、農業者の資金繰りに必要なことも見えてくる。先ほどの例でいけば、そもそも年間1千万円の返済が必要となるような借入を抱えていること自体すでに無理がある。仮に、どうしても5千万円の借入が経営上必要であるならば、返済期間の長い資金を調達するなどの工夫が求められる。

大きな投資を行う場合や新しい分野に挑戦する場合には、販売や収支の計画に加えて、資金繰りの計画をしっかり立てることが大切。この際には、独りよがりの構想ではなく、業界動向(※)までも見据えた客観的な分析が重要である。

さて、金融機関に決算書を提出。いよいよ相談が始まると、今度は細かい質問や資料の注文を受け、閉口することも多い。金融機関もサービス業であり、反省すべき点もあるが、発想を180度変えて見るとメリットも見えてくる。

農業者の立てた計画について、資金繰りを分析するプロが、無料で、かつ真剣に分析(金融機関の職員にとって、計画が成功し確実に返済されるかの見極めこそが最重要使命)してくれる。「金融機関の分析能力を自分の経営に利用してやる。」と図太く構えてみよう。

私ども農林漁業金融公庫の各支店でも、資金相談の中で資金繰り等に関するアドバイスを行っている。皆様の営農計画作成の参考に役立てて欲しい。


2.外部環境の変化に対応した資金繰り

農業の特徴として、天候など外部環境の変化による影響を受けやすいということがあげられる。
前回は農業経営に必要な資金繰りの考え方について説明させていただいたが、今回は外部環境の影響を受けた場合の資金繰りについて考えてみたい。  
最近、「原油価格の高騰から燃料費が大幅に増加」、「飼料作物の不足により飼料費が急騰」といった記事や話題に触れることが多い。こうした事態は農業経営に深刻な影響を与えており、資金繰りの面でも早急な対応が求められている。
今回は、こういった外部環境の変化に対応して、資金繰りを検討するうえでのポイントについて考えていきたい。

ポイント1
資金繰りが苦しくなった原因を正確に把握する。
外部環境の変化により資金繰りが苦しいという場合でも、詳しく経過を聞いてみると、実はそれ以前から経営が苦しかったというケースがよく見られる。こうした場合は、外部環境への対応だけでなく、経営を悪化させている根本要因を解決しないと経営の改善はできない。

ポイント2
外部環境の変化がいつまで続くのかを見極める。
不作や事故のように今回に限る一時的なものなのか、昨今の原油価格の高騰のように長期的な継続が見込まれるものなのかを見極めることが肝要。ただし、不作や事故の場合でも、原因が人為的なものであれば、改善策を講じない限り、再発の可能性があることに注意する。

ポイント3
要因に応じた適切な対応を図る。
一時的な要因であれば、短期的な運転資金の導入等により、経営の継続を図るとともに、来期からの回復に支障が出ないよう準備しなければならない。
長期的な要因であれば、短期的な資金繰りに止まらず、経営改善への取組みが必要となってくる。この場合、’箴紊欧鮨ばす、経費を節減する、J嶌僂猟拘化等により資金繰りに余裕を持たせる等の方向が考えられる。

ポイント4
外部環境の変化に備えた予防措置を講じる。
予見できないことが発生するのだから、予防措置など不可能だという意見もあろうが、資金繰りに関しては備えは可能である。最も効果的なのは、自己資本などにより十分な資金調達能力を持つことであるが、成長段階の農業経営では困難であろう。現実的な予防策としては、自分の経営を理解し支援をしてくれる金融機関を確保しておくことが重要である。このためには、メインバンクを決め定期的にに経営状況を説明しておく等、日常的な付き合い方が鍵となってくる。

以上、検討のポイントを説明してきたが、私ども農林漁業金融公庫でも、外部環境の変化に対応する農業者を支援する「セーフティネット資金」を平成19年度に創設している。皆様の資金繰りや経営改善に役立てて欲しい。


3.農業を取り巻く環境の変化(農林公庫の農業景況調査から)

農業に新たに参入したり、既に就農している方が規模拡大をめざす場合、農業に関する情勢や環境の変化を捉え、将来の経営を見通すことが重要である。
農林公庫では、担い手農業者を対象にアンケート調査を行い、経営部門別に農業情勢を分析している。
今回は、この調査結果をご紹介し、皆様が農業への参入や投資、資金繰り等を検討される際の参考としていただくようにしたい。

1.調査の概要
農林公庫では、スーパーL資金をご利用のお客様の近況を年1回お聞きし、集計と分析を行っている。今回は計6,745先のお客様に経営状況や将来の見通し等について質問し、「良くなった」と回答した割合から「悪くなった」と回答した割合を差し引いたものを指標として、経営部門別の情勢を分析している。

〜澗侶覯
19年度実績は、全体で▲
18.0となり、18年度(▲5.9)から更に後退し、3年連続でマイナスとなった。20年度の見通しも全体で▲18.1となり、回復傾向は見られない。

⊃絨
19年度実績は北海道が▲16.0、都府県が▲21.4となり、前年度(北海道▲8.1、都府県▲7.8)と比較してマイナス幅が拡大した。また、20年度の見通しは、北海道が▲22.3、都府県が▲23.9となり、引き続き景況感は暗いと見通している。

O地野菜
19年度実績は▲3.1となり、前年度(7.7)プラスであったものがマイナスに転じた。20年度の見通しは▲0.5となり、景況感はどちらかというと暗いと見通している。

げ娘
19年度実績は▲4.9となり、前年度(8.6)プラスであったものがマイナスに転じた。しかしながら、20年度の見通しは24.4となり、景況感は明るくなると見通している。

セ楡潴邵
19年度実績は▲4.9となり、前年度(▲0.5)と比較してマイナス幅が拡大した。20年度は▲1.2となり、引き続き景況感は暗いと見通している。

ν鑁
19年度実績は、北海道は▲30.5となり、平成8年度の調査開始以来初めてマイナスとなった前年度(▲16.1)と比較しても更にマイナス幅が拡大した。都府県では▲45.0となり、前年度(▲21.6)と比較してマイナス幅が拡大した。20年度の見通しは、北海道では▲23.3、都府県では▲36.1となり、引き続き景況感は暗いと見通している。

肉用牛
19年度実績の景況は▲14.1となり、前年度(18.0)から低下した。20年度の見通しは▲21.1となり、引き続き景況感は暗いと見通している。

2.まとめ
原油価格や飼料価格等の高騰の影響が避けられない情勢を受け、19年度は全ての農業部門において景況が悪化している。また、20年度の見通しでも果樹を除き改善の兆しが見られない。
このような状況の中で、農業への参入や投資を実施する際には、堅実な収支計画や資金繰り等を検討することの重要性が益々高まっている。こうした計画作成の基礎となるデータ等については、農林公庫でも提供させていただいているので、お気軽にご相談いただければ幸いである。

※農業景況調査(スーパーLご融資先の近況)

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